2024年の5月から書き出したヨーロッパにおける転職体験談ですが、もう年末ですね。思いつく限り書いていたらこんなに長くなってしまいました。
今回は私の通った転職までの4段階
- モヤモヤ: 将来に不安を感じ、ただ漫然と探す
- シャキッと: 自己分析をし、ターゲットを絞る
- ワクワク: 応募の準備をする
- ドキドキ: 応募、選考(特に面接)
のうち、第4段階の第5話です。
バックナンバー
第1段階(だた漠然と現状に不満を募らせ、やさぐれた割には頭の中がお花畑だった頃):
プロジェクトマネージャーの転職 その1 - プロジェクトマネージャーの生き方
第2段階(自分の価値観などを整理しようとミッション・ステートメントを書こうとし始めた頃)
前半: プロジェクトマネージャーの転職 その2 - プロジェクトマネージャーの生き方
後半: プロジェクトマネージャーの転職 その3 - プロジェクトマネージャーの生き方
番外: プロジェクトマネージャーの転職 その4 - プロジェクトマネージャーの生き方
第3段階(ポジションを探しながら履歴書などを準備した頃)
前半: プロジェクトマネージャーの転職 その5 - プロジェクトマネージャーの生き方
中盤: プロジェクトマネージャーの転職 その6 - プロジェクトマネージャーの生き方
後半: プロジェクトマネージャーの転職 その7 - プロジェクトマネージャーの生き方
延長戦: プロジェクトマネージャーの転職 その8 - プロジェクトマネージャーの生き方
第4段階(刷新した書類で果たして今度はうまくいくのか、期待と不安が半々だった頃)
第1話: プロジェクトマネージャーの転職 その9 - プロジェクトマネージャーの生き方
第2話: プロジェクトマネージャーの転職 その10 - プロジェクトマネージャーの生き方
第3話: プロジェクトマネージャーの転職 その11 - プロジェクトマネージャーの生き方
第4話: プロジェクトマネージャーの転職 その12 - プロジェクトマネージャーの生き方
転職への道 第4段階 ドキドキ編 第5話
前回はどのような人達が面接官として登場するのかということと、大まかな面接の心得について書きました。
既に述べた通り、面接は最低でも2 - 3回あり、その都度色々な面接官が出てくるのですが、それぞれ見ているところが少しずつ違います。ですので、それぞれどんなことを話せば良いのか書いていきたいと思いますが、今回は「将来の上司」との面接における心得についてお話しします。
面接の心得 - vs 将来の上司
言うまでもなく、面接で最も重要な役割を担っており、決定権の7 - 8割はこの人が握っています。まずは将来の上司になる人を納得させないと採用してもらえません。
まずは彼(彼女)らが主にチェックするポイントですが、次の2点です。
- 採用ポジションに必要な専門知識、職務経験(プロジェクトマネージャーのポジションの場合はプロジェクトマネジメントの経験が当然含まれる)
- 今いる従業員との親和性
一点目が最重要ですが、履歴書を書くときに考えた自分を売り込むストーリー(以前の記事)をしっかり頭に入れて、前回「面接の心得 - まずは一般論から」(前回の記事)にてお話ししたことに注意を払えば特に新たにここで書くことはありません。
ですのでここではまず二点目についてお話しします。
尖りすぎも考えもの
ポジションにもよりますが、プロジェクトマネージャーのポジションではほぼ100%チームプレーが要求されます。しかも、自分が採用された後に自分の好きなようにチームを作るケースはほぼなく、今いる従業員がプロジェクトのメンバーになって一緒に働くことを期待されています。従って、まず大前提としてチームプレーのできる人かどうか、次に、今いる従業員とマッチするかどうか(社風とマッチするかどうか、とも言えるかも知れません)は採用する側としては特に気になるところです。
ここで難しくなるのが、自分の優秀さをアピールしすぎると、スタンドプレーの目立つワンマンスタイルだと勘違いされ、チームプレーの観点からはネガティブに捉えられる可能性があるということです。これまでの経験を挙げながら自分の強みを語る際に、「自分が問題を解決した」という話だけではなく、「チームと協力して解決に導いた」「チームが問題に取り組むのをサポートした」「チームが問題解決しやすい様な仕組みを構築した」など、チームプレーの話を程よく織り交ぜる必要があると思います。
チームプレーの話をうまくできても、今いる従業員とマッチするか、社風とマッチするかは流石にいきなりは分かりません。欧米の大手自動車メーカーだとちょっと強引なオラオラスタイルの方が好まれると聞いたこともありますし、あまり尖っているよりは協調的な人を好む会社もあるようです。こればかりは自分の性格と合うのか分からないので、変に猫をかぶるよりも自然体でいるしかないでしょう。もし社風とマッチしないということで落とされたとしても、自分の性格とマッチしない社風の会社で働くことはストレスなので、むしろ入社前に性格の不一致が分かって良かったと考えれば良いでしょう。
従業員や社風との親和性について、面接中にその感覚が掴めなかった場合は、むしろこちら側から聞いてみても良いと思います。私の場合は、ある鉄道業界のポジションに応募した時に、面接官が自分と同様に自動車業界からの転職者だったことがあり、鉄道業界全般、もしくはその会社の雰囲気は自動車業界とどう違うのか、質問したことがあります。素直な感想を聞かせてもらましたし、自分のスタイルとマッチしているのではないかと感じることができました。
人間臭さも出していく
先ほど、将来の上司になる人がチェックしているポイントの一点目をあっさり飛ばしてしまいましたが、やはり最重要項目ですので、相手の期待している能力が何なのか改めておさらいしておきたいと思います。(これまで書いてきた内容とあちこち重複するかも知れませんが・・・)プロジェクトマネージャーに期待する能力は以下の3つだと考えます。
- 計画策定能力: プロジェクトの計画(予算案、スケジュール)を立てられること
- 計画遂行能力: 策定された計画を遅滞なく実行できること
- リカバリー能力: 計画通りに進まなくなった時に、問題を解決し、再びプロジェクトが「流れる」ようにすること
これらの能力があることを、これまでの実体験を挙げながらアピールしていくわけですが、ということは「リカバリー能力」をアピールするには問題に直面した話をしないといけません。前回もお話ししましたが、やはり良いことばかり語っても現実味に欠けるので、困ったこと、失敗したこともあったということをしっかりと話すべきです。このような経験は決してマイナス要素ではなく、それをどう乗り越えてきたのか、次はどう対応したいか、という前向きな考察があればとても評価されます。
黙っていても、「問題に突き当たったことはありますか?」という質問がされるケースは非常に多いです。面接前に過去の経験をしっかりと振り返って、失敗したこと、問題に突き当たったこと、それをどう乗り越えてきたのか、反省は何か、というネタをちゃんと引き出しに入れておきましょう。
しかし禁句もある
失敗したことと同じぐらいの頻度で、「自分の短所は何だと思いますか?」と聞かれます。自分の短所をしっかりと理解した上で、どう改善していきたいのか、ということをすんなりと説明できるようにしておく必要があります。
私はこの質問に対して、当初は「ここのネイティブの人に比べると、若干押しが弱く、議論でまくしたてられることがある、だって外国人(日本人)なんだもん、テヘ」という答えをしていました。そして、何度か落とされているうちに気づいたのですが、欧州で(プロジェクト)マネージャーのポジションに応募している限り、実はこれは完全に禁句だったのです。
欧州では、マネージャーと名のつく職種にいる限り、「気が弱い」「押しが弱い」はタブーです。これを言った時点で適性無しと判断されます。やはり自己主張、議論の文化、自分の任務を遂行し、部下を守るためには「押しが強くて議論に負けない」は必須のスキルと考えられているようです。
決して嘘はつくべきではありませんが、よっぽど突っ込まれない限りは何か他の短所について語った方が無難です。
今どきウケる言葉は
タブーがあれば、ウケるというか好感度の高い言葉もあります。
「Empathy」(共感)という言葉がマネージャーに必要な特性として注目された時期があり(少なくとも前職ではマネージャー研修でよく聞いた時期がありました)、恐らく今でも自分の性格や長所を表す言葉として「empathic」(他人と共感できる)を用いると、この一言で「従業員の目線で考えることができ、サーバントリーダーシップを実践できるいい感じの人」という印象を醸し出すことができる気がします。(あくまで個人的印象なので、話半分に聞いて下さい、、、)上で述べた、「今いる従業員との親和性」の判断にもポジティブに働くと思います。
乱暴な言い方になりますが、基本的に「空気を読む」ことに慣れている日本人は、個人主義の欧米人と比べると特に気を使わなくても「empathic」に見えることが多いようです。(あくまで平均値の話です、もちろん個人差はあります)ですので、欧米人に比べちょっと押しが弱いが、皆の話を聞き、顔色を伺い、根回しをしつつ仕事を回していくタイプの方は、いっそのこと「empathic」という言葉を使ってみては如何でしょうか。上で禁句について話しましたが、押しの弱さの欠点を「empathic」と呼ぶことでむしろ長所として表現できるわけです。
ちなみに私は一度、「Empathy」という言葉を習いたての直属の上司(新しく赴任してきて私のことをあまり知らなかったのですが)に、マネージャー研修の目標に「Empathyを理解し、日常業務で実践する」と書かされ、それを見たそのさらに上のエラい方に(付き合いが長く、以前から私のことをよく知っていた方)に「Empathyの塊みたいなお前が何でEmpathyを学ぶんだ?」と言われたことがあります。その時、私もこの言葉をよく理解していなかったのでとりあえず上司に言われるまま書いたのですが(その上司には「Empathy」のカケラもなく、他の目標を提案したのを却下されて押し通されたのもあり・・・)、私は普通にしているだけでこちらの人間からは「empathic」だと見えていたようです。大体、私の研修の目標に無理やり「Empathy」と書かせる時点で、本人は全く「Empathy」を理解していないという何とも皮肉な話でした。
今回は、将来の上司になる人と面接する場合に気をつけるべきことについて思いつく限り書いてみました。選考の最重要人物なのでかなり長くなってしまいましたが、とにかく難しいのは「自分個人の能力と経験を売り込み、マネージャーとしての強さもしっかり見せながら、チームプレーができることを納得してもらう」ということをうまくバランスをとりながら盛り込んでいくことです。母国語なら頭をフル回転させれば何とかなるかも知れませんが、ただでさえ考えることがいっぱいあるのにさらに外国語でとなるとやはり場数が物を言うかなと個人的には思います。最初からうまくいかないかも知れませんが、面接で落とされてもめげずにとにかく応募し続けることをお勧めしつつ、今日はここまでとします。
次回は将来の同僚と面接する場合と、人事部と面接する場合に注意すべき点についてお話ししたいと思います。多分年明けになってしまうと思います。それでは、良いお年をお迎え下さい!
(書き手K)