『プロジェクトマネージャーの生き方』を考える際に、『プロジェクトマネジメントとは何か』を考えることは避けては通れないだろう。今回はいくつかの観点から、プロジェクトマネジメントとは何かを考えてみたいと思う。本記事のゴールは、プロジェクトの定義・姿を正しくとらえることを通じて、自らの動きの見直しに繋げる、すなわちキャリア方向性の検討につなげていくことにある。
PMBOK定義等による『プロジェクト』
PMBOK(LINK)によると、プロジェクトとは以下のように定義されている。
the definition of a project is “a temporary endeavor undertaken to create a unique project service or result.” Projects are temporary and close down on the completion of the work they were chartered to deliver.
適当な(雑にという意味ではありません)日本語訳をPMI等の書物から引用すると、これは、
独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期性の業務である
となり、特徴としては有期性があり、プロダクト・サービス・所産を創造する、というスコープが定められた活動を『プロジェクト』と定義しているように見受けられる。これは、プロジェクトではない活動に目を向けると多少理解しやすいかもしれないが、例えば、『社員に給与を支払う』『オフィスをメンテナンスする』等の有期性を伴わないいわゆる定常業務は一般的にはプロジェクトに該当しない、と言われている(あくまでPMBOKの定義に基づいて話しており、決して定常業務が価値が低いとかそういう意味ではありませんのでご理解頂ければと思います)。
また、例えばNASAなどでは、
相互に関連するタスクから構成され、多くの組織が参画して実施される3年以下程度の期間の活動
と定義されており、有期性についてはPMBOKと同様にとらえられるが、どちらかというとそのプロセスに焦点が当てられているように思う。いずれにしても、NASAとPMBOKでもこれだけ違うのだから、明確に定義することは難しいだろう。逆に言うと、概ねこれくらいの抽象度でしか定義が難しく、前向きに捉えるとあまり悩まなくても良いということにはなる。
以下では、自分の立場や置かれている環境によって異なるとは思うが、上記のような内容を念頭に、少しプロジェクトマネジメントの定義を考えてみたいと思う。
『プロジェクト』をマネジメントするとはどういうことか
上記のように定義された『プロジェクト』という活動を成功させるために、『プロジェクトマネジメント』という活動が存在する。ここでいう『マネジメント』とは、例えばドラッカーの思想等に従って、
- 投入した資源よりも多くの総和を生み出す生産体を生み出す
- あらゆる決定と行動に対してただちにやらなければならないものと将来に必要とされるものの調和をとる
とすると、『プロジェクトマネジメント』とは、ざっくりとは
- プロジェクトに関わる人的資源やプロセスを最適化する
- プロジェクトに関わるQCDのバランスを取る
という活動のようにとらえられる。
(これを意識して定められているか分からないが)『プロジェクトマネジメント』を上記のような活動だと捉えると、PMIで定められている以下の定義についても何となく納得いくような気がする。
Project management is the application of knowledge, skills, tools, and techniques to project activities to meet project requirements.
すなわち、プロジェクトマネジメントとは、
- 何かしら価値を創造するための有期性のある活動(=プロジェクト)を成功させるために、
- 人的資源やプロセスの最適化、あるいは、QCDのバランスを取るといったプロジェクトの要求を、
- 知識、スキル、ツール、テクニックを通じて実現する活動
であると読み替えることができる。
経営層が期待するプロジェクトマネジメント
では、経営層やあなたの上司が期待するプロジェクトマネジメントとは何だろうか。上記のように、何かしら価値を創造するための有期性のある活動(=プロジェクト)を成功させる、ことだけが目標だろうか。もしあなたが経営者であったとしたら、おそらく、『すべてのプロジェクトがうまく行って欲しい』と考えること思う。
従って、プロジェクトマネージャーである貴方は、『プロジェクトマネージャーとして担当しているプロジェクトを成功させる』、ことに加えて、『組織や経営者が成功して欲しいと願っている全てのプロジェクトを成功させる』ことにも貢献する必要がある。この方法論については、一般的にはPMO(Project Management Office)が担う、等とされているが、次回は、一般的なプロジェクトマネジメント手法に加えて、組織サイズ、その構成等に応じて異なると考えられる、『組織や経営者が成功して欲しいと願っている全てのプロジェクトを成功させる』ための方法論について考えたいと思う。
(書き手:S)
【メモ】他に書きたいこと
プロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーのスキルセット
プロジェクトマネージャーに対する経営層からの期待
パワーポイントエンジニアリング
私の大失敗プロジェクト
最近のプロジェクトマネジメントの流行り
機能品質とPOC
他に何かあったらコメントで教えてください